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「私には誰にも負けない世界がある」
いつの頃からかわからないが、私の中にある信念のようなものだ。
私は秀でた才能を何も持ち合わせていないにもかかわらず。
この「誰にも負けない世界がある」という圧倒的な自信は常に心の中にあった。

通っていた幼稚園のピアノ教室で、4歳から17歳までピアノを習った。
小学校の高学年からクラシックを弾くということをやめる選択をした。
クラシックがちっとも面白くなかったので、先生と交渉してポピュラー系の音楽にかえた。

年に1回のピアノの発表会は、みんなクラシックなのに私だけ
「ホールニューワールド」とか「パリは燃えているか」とか「海の上のピアニストより 愛を奏でて」だった。
それも自分で決めた。
先生がレベルに合わせて候補を選んでくれるが、自分もCD屋さんに足を運んで、視聴して曲を選んだ。

ピアノに関しては自信があった。
技術ではなく、表現力には圧倒的な自信があった。
全く何の根拠もないが「私は誰にもピアノは負けない」と思っていた。

当時同じ学年に、音大を目指している超絶ピアノがうまい男の子がいた。
それはもう技術力が圧倒的に違うのは、たまに彼が弾いているのを聞いて分かった。
彼は特に指を高速で使わないといけないような曲を得意としていた。
「革命」とか、それはもう超スピードで華麗に弾いていた気がする。

にもかかわらず、彼にも負けていると思ったことがなかった。
クラシックとポピュラーで志向が違うし、「うまいけど表現力は私が上だよね」という謎の上から目線でいた(苦笑)
音大を目指しているわけだから、表現力だって楽譜に書かれたものを理解して、ちゃんと表現していたと思う。

うまく言葉に出来ないのだけれど、「私は楽譜を超えて、自分の思いを表現して弾くことができる」って当時マジで思っていた。
だから実力に圧倒的に差がある日を目の前にしてもぶれなかったのだと思う。

そして私は「音楽に自分の思いをありったけこめて弾く」ということが可能だった。

「パリは燃えているか」はNHKの「映像の世紀」のメインテーマだった。
この番組は20世紀の戦争のドキュメンタリー番組で、父親が好きで見ていた。
私は番組時代はつらくて悲しくて嫌だったのだけれど、この音楽には心を惹かれた。

私は「暗い曲」が大好きだった。
激しいもの、悲しいもの。
きれいなだけじゃだめだった。
「海の上のピアニストより 愛を奏でて」は優しくてかわいい曲のように思うけれど、映画を見るととても切ない曲だった。
暗い曲が好きすぎて、「葬送行進曲」をピアノの発表会に弾きたい、っていって先生に全力で阻止されるぐらいだった。

そして17歳、最後の発表会に選んだ曲はショパンの「革命」だった。
あの音大を目指していた男の子が弾いていた、超絶難しい曲である。
前年もチョイスしたのだが、圧倒的な技術不足を心配した先生が首を縦に振らなかったのだ。
最後だからということで、先生があきらめてようやく弾けることになったのだ。

最後の最後になんでクラシックを選んだかというと、「仮面ライダークウガ」でこの曲の音符通りに殺人を犯す怪人がでてきて、
「うわぁ~音楽の暗さといい、申し分ない!」って思ったからで、先生はその理由にも微妙な顔をしていたと思う。

とにかく技術が圧倒的に不足していたので(私は指を滑らかに使うような曲が非常に苦手だった)、半年以上延々と練習した。
それでも速度も本来のスピードよりも圧倒的に遅い状態でしか、仕上がらなかったと思う。
技術は中学時代に同じ学年にいた男の子には全く勝ち目はなかった。

でも、私はそれでも自分の「革命」に圧倒的な自信があった。
「この革命は私にしか表現できないものだ。」と。

自分の中にある怒り、悲しみ、憎しみ、憤り、そのほかなんて表現したらいいかわからない暗いもの。
いくらでもわいてくるから、それを全て音楽に昇華して表現していた。
脳から指に向かって、感情が、思いが、全てメロディーとなって聞き手にぶつかっていく感じ。

これが「私の世界」であり、誰にも負けない世界だった。

マインドが変わった今、怒りはだいぶ私の中で薄れている。
今ピアノを弾くとどういう感じになるのだろうか。
どんな思いを音楽にのせるだろうか。
どんな曲を選んでひくだろうか。

まだ「誰にも負けない世界」があるだろうか?
それともあの世界は、怒りがあったから表現できた世界で、失われてしまっただろうか。

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この記事を書いた人

蒼(あおい)

蒼(あおい)

【灯台ブロガー】
●接客業を11年半やって、2018年5月31日で会社員を卒業しました!
●かつての私のように人生って暗闇だよねって思っている人に、灯台のように、北極星のように、そっと道を照らしてあげられる文章を書いて生きていきたい。

twitter:@yazumi_aoi

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