ツレヅリストの蒼です。
本業は書店員です。
担当はざっくりいうと、実用(女性系のぞく)と芸術です。
そのうち、細かく何を担当しているか書こうと思っているのですが、細かく分けて書くと長いので、今度。
さて、今朝こんな記事を書いたのですが、そこでふれた本について書こうと思います。
「ジバンシィとオードリー」という絵本。
デザイナーである、ユベール・ド・ジバンシィと、オードリー・ヘップバーンの人生が上下に分けられて描かれていき、そして二人が交錯したときから、物語はひとつのページに大きく描かれていきます。
この本はジバンシィとオードリーの人生と友情を描いているものですが、私はそれよりも胸に刺さったページがあったのです。
それは見開きに1ページ。
そこにはジバンシィもオードリーもいないページなのです。
この絵に惹かれまして、うちの一番目立つフェア台で売ることに決めました。
「この本どうかしら?」という打診。一目惚れで即決
私の担当には芸術があるので「ジバンシィとオードリー」というタイトルを見たときには、勝手にノンフィクションの伝記か、何かの評論盆だと思っていました。
映画かデザインの本かな~と思っていたら、こなくて。
「絵本だったので、児童書に起きます~」といわれて、あぁ、そうなんだ~と納得して終わりました。
次の日、「実はこの間入ってきたオードリー・ヘップバーンの絵本なんだけど、芸術でどうかしら?」と、打診がありました。
絵本担当の社員さんいわく、「すごく素敵な絵なんだけれど、うちのお店の絵本売場では売れないだろう」というのです。
そのときにみた絵に一目惚れ。
その場で「うちで売ります!」といって、その場で発注をかけたのです。
私には、特に推したいページがある
そのページの主役はジバンシィではありません。
オードリー・ヘップバーンでもありません。
それは見開きいっぱいに描かれている、女性、女の子、そして男の子。
全員が黒い服を着ています。
「ティファニーで朝食を」で、ジバンシィがオードリー・ヘップバーンのためにデザインしたドレスがヒットしたことにより、
世界中の人が「上下黒い格好をしたくなった」と描かれているページです。
そのページには、人種、性別、そして体型も関係なく、みんなが笑顔で「黒い服」を着ているのです。
なんだか、胸がいっぱいになりました。
特に右上に書かれている子は、お腹がぽっこりでたぽっちゃりさん。
彼女がニッコリとして黒い服を着ている姿は、私の心をうちました。
それは私も同じように太っているから。
自分なら、あんなにニッコリ笑って美人の女優さんのファッションを真似することができるだろうか?
きっと「私なんかが来たってバカにされる」と思って着ることもないでしょう。
というより、そもそも真似しようなんて頭によぎらないかもしれない。
でも、「着たい服を着ているの、私。」という笑顔で彼女は描かれているのです。
そのニッコリと笑う彼女の笑顔は、ぜひ本を手にとって見ていただいたいです。
売りたいんだ、だから売るためになんだってするんだ!
さてすぐに入荷して、きれいにビニールを掛けてフェア台に並べてみたのですが、なんだかピンとこない。
まだ本の並びが足りていないこともあるのかもしれませんが、何かがちょっと足りない。
「あ、POPがないんだ~」と。
メーカーさんから提供されたPOPなどがあると、それを貼っていたんですが、今回は完全にオリジナル。
POPがありませんでした。
こうなったら・・・作るしかない・・。
職場のPCを1台独占して、作成したのがこちらのPOP▼
ちょっとわかりにくいですが、オードリー・ヘップバーンのイラストが浮き上がっています。
(売場の写真はちょっとNGなので載せられません・・・)
時間は超かかったし、ちょっとブログに愚痴を書きましたが先輩に「売れないものは何をしたって売れない」なんていわれましたけれど。
そんなことはまだわかりません。
だって、私が「ステキ」「売りたい」と思ったんだから!!
誰かに届けたいという思いがあるのに、「たくさん売れたって給料があがるわけでもない」なんて理由でやめられますか?
(しかもこの本は絵本なんで、厳密には売上が上がっても、児童書の売上に配分されると思います。)
でも、それでも。
そんなことは関係なく。
いい本だと思ったんです。
まちがいなく、いい本なんです。
だから売りたい、それでいいんです。
手にとって見て欲しい、家に連れて帰って欲しい。
この本、本当におすすめです。
私の心からの願いです。
こちらの記事もいかかですか?
私の記事ですごく読んでいただいている、よしもとばななさんの「ムーンライト・シャドウ」の紹介記事です。