書店の本にはシュリンクをするべきか否か。このアンビバレントの解決は書店だけじゃできない

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ツレヅリストの蒼です。
書店員歴半年、週の休みの大半を数点の書店を巡ることで過ごしています。
・・・そう考えると1年の9割は書店で過ごしていることになりますな。

昨日私のタイムラインでは「書店の本のビニールの是非」について流れていました。
とある作家さんが「書店がビニールを全部かけるから、売上がさがるのだ!こういうことをいうと、書店関係者から現実がわかっていないなどの、ツイートが来るがしかし!」ということをtwitterで書かれていたのです。
それに対して、「それもわかるが、しかし、書店の現状はこうだよね」という書店員さんの様々なつぶやきを目にしました。

私もつい先日、ビニール(書店ではシュリンクといいますが)についてお客様から全く反対のことでお叱りを受ける経験をしました。
そのことについて、twitterで連投したら、RTやいいねをいただきました。

今日は本のシュリンク問題について、ブログにまとめました。

先日であった本のシュリンクについての出来事。
本屋はなぜシュリンクをかけるのか。
私自身は「本屋は人と本をつなぐ場」と考えている。

そんなことを書きました。

※このブログでは書籍に書けるビニールを「シュリンク」で統一して表記しています。
ただ、お客様から言われた意見のときのみは「ビニール」と表記しています。

シュリンクをしていないと買わない人たち

先日電話で在庫の問い合わせがありました。
そのときにいわれたことに、衝撃を受けました。

「その本ってビニールかかってます?かかってないなら新品じゃないんで嫌なんですけど」

私が働いているところは、新刊書店です。
並んでいる本はすべて、新品です。
もしも汚れや破れや傷みがあるのだとしたら、それは全部お客さんの扱いが酷いからじゃないですかっ!!

正直怒りにふるえて、思わず口にでかかる思いをのみこみました。

私の手元にある本は、シュリンクはされていない本でした。
しかし、どこにも折れや汚れ、ヨレもありません。
そのことを伝えてもなお、お客様は
「他にないんですよね?じゃあ、いいです。」といわれて電話を切られました。

Amazonなどのネットで購入すると、本に触れる人数が「不特定多数」ではなくなります。
そのことに慣れていて「書店の本はシュリンクかかってない=汚い」という認識をお持ちの方が増えたのだろうと思います。

店頭の本を持ってこられて、特に大きな汚れがなくても「他の人が触ったのが嫌だから取り寄せてほしい」という方も増えている気がします。

ただはっきりいっておきたいのですが、「誰の手にも一度も触れたことがない本」というのは、ネット書店にも、現実の書店にも存在しません。
ピッキングも店員もすべてアンドロイドやドローンになったら、叶えられる未来です。

シュリンクしていると買わない人たち

売り場でお客様に声をかけられました。
「中身を見たいのだが、ビニールをかけられていて見られないじゃないか!」
私の職場では要望があれば、店舗でシュリンクしたものは外してお見せする、ということになっています。
シュリンクを外してお渡ししました。
そのときにもしご不要でしたら、お近くのスタッフにお渡しいただくか、レジにお持ちいただけますか?とお伝えしたところ、
「いちいち声をかけないといけないのか。なんていう店だ。こんなところでは買わない、中身の読めるもっとちゃんとした店に行く」
と声を荒げて、私に本を投げつけるように渡して去っていかれました。

ちょうど「ビニールかけてないものは新品じゃないから買いたくない」といわれた日の翌日の出来事だったので、考えさせられました。

確かに読みたい本を、いちいち「すみません、これ見たいんでいいですか?」と声を掛けるのは面倒なことでしょう。
しかも、「やっぱりいらないです」っていうのもハードルが高い行動かもしれません。

さらにいうと、書店員を売り場で見かけないかもしれません。
レジ担当以外に、事務所で本の荷解きをしている、電話に出ている、休憩、などで全員売り場にいることはありません。
(先日ストッカーを勝手にあけるお客様の件で、やはり書店員が売り場にいない、ということが指摘されていました)

だから「ビニールを掛けている店じゃ本を買えない」という指摘は真実でしょう。

書店では、なぜ本にシュリンクをかけるのか

書店では、なぜ本にシュリンクをかけるのか。
理由は大きく分けて3つあります。

1、傷むから

シュリンクが掛かっていない本は傷みます。
私が担当している写真集や映画の本もそうですし、手芸の本、家庭の医学の本なんかも傷みます。
帯が破れるなんていうのは日常茶飯事ですし、表紙がどんどんよれていきます。
背表紙の上が出し入れのすえよれている、挙げ句破れている、なんてのも多い。

児童書は顕著ですね。表紙が引き裂かれるとか・・ページ破れてるとか・・。

別件ですが、先日店で入荷した雑貨の袋ですがあまりに中を開けられるので、お店でもさらにその上からシュリンクをかけました。
しかし週末には、そのシュリンクを開けられて中身が出ているという状態。

書店の本を「売り物」と認識されていないような扱い方が多いのは事実。
それを自衛するにはシュリンクするしかありません。

書店は本返せるだろ?と思う方もいるかもしれませんが、あまりにぼろぼろになった本は受け取ってくれない出版社さんもあります。
そうなると不良在庫として書店にのしかかります。
(たぶん出版社さんにそういう本が返っても、処分されるのでやっぱり出版社さんの負担になりますよね)

2、付録がついているから

雑誌、コミック、などの付録がついている商品。
残念ながら抜き取られたりするんです。

悪意がなくても、付録が本から落ちてなくなる、なんてこともありえます。
そうすると「付録がない」ことが商品価値をなくすことになります。

そうなると、やはり自衛するためにシュリンクをします。

3、「中身を読んでも買わない」お客さんがいるから

コミックだけでなく、雑誌、文庫も多いですよね。
特にコミックは中身をサラッと読めてしまったら、買わない人も多い。
毎日お店に来て、数時間立ち読みして文庫読破する人もいます(けっこういろんな書店にいることをtwitterで知りました)

「この本はあるかしら?ないならいいの、見てみたいだけだから。私、本はAmazonで買うことにしているので。」
といわれたことがあります。
最近は「バーコードで読み取りしてメルカリで安く買えばいいのよ、私そうしてる!」といっているのも見かけました。
そういったお客様にとって「書店=本の中身を確認する場所」ということになります。

そうなると正直、お店側としては「中身を見えないようにする」という手段を取らざるを得ません。
一部のお客様だけなのでは?という声もあるかもしれませんが、立ち読みのお客さんで棚の前を占拠される事自体不利益。
他のお客さんが敬遠してこなくなってしまいます。

ただ、最近は「コミック1巻が読めます」という書店も増えてきていますね。
出版社さん、取次さんが見本をくださったりすることもあれば、もしかしたら書店さんの方針というところもあるかもしれません。
そういう流れは今後も増えていくといいなぁと思っています。

「本屋は人と本をつなぐ場」であるから、私は1冊だけはシュリンクをかけない

書店員歴は短いですが、書店めぐり歴=自分の生きている年数ぐらい、書店が好きです。
手にとって気になったから買ってみたり、知らない棚の本をとってページをめくる。
出会ってしまったから、その本を買った、という本も書棚にあります。

私の中には、「本屋は人と本をつなぐ場」という信念が、過去の経験から培われています。
だから「全部シュリンクしてしまう」ということはしないようにしています。

私の担当は、実用と芸術ですが、特に芸術の部分はシュリンクをかけるようにしています。

価格が高いもの、写真集やイラストなどが多く載っているもの、デザイン関係の本、などはシュリンクをします。
ただ、必ずお客様が手に取れるようにシュリンクをしない本も用意しています。

ただ・・いいたいのは、シュリンクしない本を「見本」といってしまうのは、良心が痛むということ。
この本も誰かの手元に届くために作られてきたものだから。
その「見本」があることによって売れていたとしても、日々少しずつよれたり、汚れたりする本には悲しい気持ちになっています。

きっとシュリンクをかける書店員の多くの心にこの「あぁ、本が傷んできている」という悲しさがあるんじゃないでしょうか。
ただ立ち読みされて、汚れていくのを毎日見たくないですものね。

シュリンク問題は書店、出版社、取次、そしてお客様も向き合うべき問題だ

「お前が実用と芸術だから言える綺麗事だろう、コミック必ず1冊見本とかできるか!」
と思われる方もいるかも知れません。

それは本当にそう思う。
コミック担当さんが、毎日どれだけの量の書籍と格闘しているのか・・。
誰よりも早く来て、誰よりも遅くまで仕事をしているのが、コミック担当さんたちです。
その負担の大きさを思うと、「この本の1冊は見本にして~」なんて言っている場合ではありません。
それにすべての本が棚に並んでいるわけでもなく、売れたものを常にストックから補充したりする量も尋常じゃありません。

私の担当が実用と芸術だからできること、もしかしたら、信念というより我儘なのかもしれません。

本にはシュリンクをかけるべきか、かけないべきか。
これは書店だけではなく、出版さんや、取次さん、そしてお客様にも考えてほしいのです。

出版社さん。
売るために1冊が見本扱いでもいいといえるような大きい出版社だけではないでしょう。
1冊1冊計画して、手塩にかけて、送り出す出版社さんもいるでしょう。
戻ってきた本はまた、別の書店に送り出されるシステムですから、きれいに本が返ってきてほしいのでは?

ということは、私のやっている1冊見本はご迷惑なのかもしれません。
それとも、それでも誰かの手に届くほうがいいですか?

取次さん。
全国の書店を一番がっちりつないでいるのは、取次さんですよね。
出版社さんと書店をつなげるパイプを、もっと使ってもらえると・・うれしいです。
物流がネットに負けつつある今、他の方法も模索していくしかありません。

そしてお客様。

あなたが今手に取った1冊は、次の誰かの手に大切に抱きしめられるものかもしれません。
雑につっこんだり、適当に棚に放っておいた本は、お店の商品です。
食器や洋服と違って明確に「これは破損したもの」と区別がしにくいのが本です。
でもそれが本です。
誰もが手に取って、自由に触れることができるのが本です。

「不特定多数がさわったものは、新品じゃない」っていうものじゃないんです。

シュリンクしてないから買いたくない、ということに対して、もう一度考えていただきたいです。

そして立ち読みできたら、それでいいというあなた。
あなたが立ち読みして「あぁ、おもしろかった」と済ませたから、次の巻がもうでないのかもしれません。
あなたが買わなかったことで、あなたの立ち読みしていた本屋が閉店するのかもしれません。

シュリンクしてあるから、その本屋は使わない、ということを、改めて考えてみてください。

本はネットで買えます、というか、データで読めます。
そんな時代を生きる書店員として「本屋は人と本をつなぐ場」をどれだけ貫けるのか。
私は、まだ少し頑張ってみたいと思っています。

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この記事を書いた人

蒼(あおい)

蒼(あおい)

【徒然と日常を綴るツレヅリスト/書店員】
●2018年5月31日、自分を大切にしない働き方をやめました。
●現在は書店員(料理・手芸など以外の実用・芸術担当)
●ご機嫌に毎日を過ごす方法にチャレンジしてます。

twitter:@yazumi_aoi
Instagram:@aoi_2re2re

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