「ウルトラマンマックス 15年目の証言録」が出版される。
それを初めて知ったのは、仕事場でだった。
書店員をしている私は、大量のFAX注文書の中でこの本に出会った。
確か発売の2ヶ月ぐらい前だったろうか。
「マックスの本がでる?」
「売りたい!」
と事務所で叫んだと思う。
そして「絶対に読みたい」と心のなかで付け加えた。
ウルトラマンマックスと私の関係
ウルトラマンマックスという作品に、実はそこまで深い思い入れがあったわけではない。
平成三部作が念願のリアルタイムウルトラマンだった私にとって、マックスはちょっとよくつかめない作品だった。
ネクサスにどハマリしていた弟も、マックスにはちょっと戸惑っていた。
なにしろ、「第三番惑星の奇跡」の翌週が「わたしはだあれ?」をやってのける作品である。
その一方でウルトラシリーズの出身者が豪華に登場するゴリゴリの王道感。
「私の生きてる世界ってそんないいもんじゃないよね」
と冷めた目で世間を見るようになった私にとっては、眩しすぎるような明るい輝きがマックスにはあった。
そんなマックスを、大学生だった私は全部は見ていなかったと思う。
(土曜朝の放映だったから、録画はしていたはずなのだが。)
ウルトラマンマックスは、なにか特別な存在である。
そう感じ始めたのは放映から数年経ったあとだ。
超ウルトラ8兄弟のあたりで、いろんな特撮関係のイベントに行く楽しさを覚えた私は、研雄会にもよく参加していた。
研雄会とは、ウルトラシリーズの脚本を書かれた梶研吾さんと小林雄次さんのイベントである。
阿佐ヶ谷ロフトAで行われてたそのイベントは、「オフレコでね」とゲストががんがん裏話を話してくれるイベントだった。
お酒ありのイベントなので、それはもういろんな話を聞いた気がする。
(オフレコとはいえメモはたくさんとったはずなのに、その秘密のメモは、数回の引っ越しを経て行方不明だ。)
そのイベントで最初に「おや?」と思ったのだ。
梶さん、小林さんをはじめ、ゲストに来ていらした方々の熱気が違うのである。
その作品に関してだけ、突然ボルテージがぐっと上がった。
そんな感じを受け取った。
他のウルトラの作品にも関わっているはずなのに、マックスになるとテンションがあがるのはなぜだろう?
自分の中のマックスに対するイメージと、制作に関わった方々の熱い思い。
そこに乖離があった。
なぜだろう?と思ったまま、15年が過ぎた。
そしてこの本が現れた。
迷いなく買うことにした。
確信があった。
そこに私が抱いている乖離の答えがあると。
読み始めたがすぐに、「これは一気に読みたい」と休日まで読むのをやめた
1章はマックスを立ち上げメンバーが語る章だ。
この章で、というよりも、むしろ1人目のプロデューサをされた八木毅監督のところでぐいっとひきこまれた。
途中でページを捲るのがやめられない。
マックス立ち上げまでのスピード感がぎゅんぎゅんとくる。
金子監督を含めたメンバー4人で対談する項目で、金子監督が日記帳をもとに話してくださる。
体感だけでなく、日付というデータに補強されることにより、さらに立ち上げの加速度を追体験できる。
途中、八木監督が激務で体調を崩されたと書かれていたけれど、もうそれはそうですよ、監督!!、とこちらが悲鳴を上げたくなるほどの濃密さ。
購入した日に八木監督の項目を読んだけれど、それから2日ぐらいぐっと我慢してテーブルに置いておいた。
「これは一気に読みたい!通勤の合間にのんびり読む作品じゃない」。
読むこちらのスピードもマックスで挑みたくなった。
奇しくも「今日一気に読むぞ!」と決めた日は3/2。
この本の正式な発売日だった。
※ちなみに本は雑誌やコミックのように発売日遵守のものもあれば、入荷日に店頭に出していいものもある。
マックスは後者の本だった。
ウルトラマンマックスを語る上で大切な言葉が書いてあった
この本で繰り返し出てくる八木監督の言葉がある。
「クリエイターの自由を守りたい」
私は八木監督がプロデューサーをやりながらシリーズ構成をされているとは知らなかった。
もしかしたら昔イベントで聞いていたのかもしれないが、覚えていなかった。
知っていたとしても「プロデューサーがシリーズ構成を兼務」ということのすごさがわからなかったと思う。
きっと今でも、1/10もわかっていないはずだ。
この言葉は全ての対談で語られていた。
そういっても過言ではない。
これは私の勝手な想像だけれど、「クリエイターの自由を守る」というのは、とても大変なことだと思う。
メカや怪獣はおもちゃ関係に色々関わってくるだろうし、タイアップ企画の話だってあるだろう。
番組を作るには円谷プロダクション1社だけではすまない。
そういうところから「こういう話はやめてほしい」とか「こういう方向で話をすすめて」という要望がでるものではないだろうか。
それらとプロデューサーとして、八木監督は最前線で戦われてきたのではないか。
そして「クリエイターの自由を守り抜いた」からこそ、私がイベントで感じてきた熱いボルテージがあったのではないか。
これが答えだよ、そうだ、これが答えだ。
ページを捲りながら、何度もそう思った。
2章と3章について少しだけ
私が語る言葉なんかより、みなさんに実際にこの本のマックススピードを感じてもらいたい。
だから、一番印象に残った部分だけ書こうと思った。
しかし少しだけ2章と3章についても。
2章、3章と、読みすすめるたびにみなさんが、マックスに関わることをつい昨日のことのように語る。
なんだか、それが読んでいてうれしい。
2章は特に三池崇史監督、脚本を書かれたNAKA雅MURAの話が読めたのが嬉しかった。
個人的には、マックスといえば「第三番惑星の奇跡」!!というぐらい衝撃だったので。
3章のDASHのメンバーのインタビューは個々で行われたのに、「仲が良かった」というエピソードにぶれがない。
マックスファンにとってはたまらなく嬉しいんじゃないだろうか。
映像の中のDASHのメンバーと、俳優さんたちのチームワークを感じられるとうれしくなるタイプなので、私は嬉しかった。
ウルトラマンマックスのバイブルはまちがいなくこの本
最後に、読み終わった直後の私の感想ツイートをここに記しておきたいと思う。
長々と書いたけれど、一番言いたいのはこの言葉だと思うから。
平成三部作のバイブルが、「地球はウルトラマンの星」ならば、ウルトラマンマックスのバイブルはまちがいなくこの本です。
本の紹介はこちら
本業は書店員をしています。
本を紹介する際に、ネット書店へのリンクはとても便利です。
画像出てくるし、必要な情報にすぐ飛べるし。
とはいえ、抵抗がないわけではない。
なので、リンク先には書店で受け取れるサイトも含めてあります。
「Amazonだけでいいわ!」「楽天がありゃいいのに」と思う方もいるかも知れない。
でもよかったら、無理ではなかったら、購入時に「書店受け取り」を選んでもらえると嬉しいです。
一書店員のお願いでした。